こんにちは。最近、「小中高校生の自殺者数が増加した」というニュースを見ました。同じように目にした方も多いと思います。子どもの命に関わる話題である以上、不安やショックを感じるのは自然な反応です。しかし、強い言葉だけが一人歩きすると、「どうしたらいいのかわからない」という無力感につながってしまうこともあります。まずは落ち着いて、数字の意味と背景を整理することが大切です。
実際の数字はどう動いてきたのか
単年の増減だけでなく、ここ数年の水準を見る
厚生労働省・警察庁の確定値では、2025年(令和7年)の小中高校生の自殺者数は538人(小学生10人、中学生172人、高校生356人)で、前年の529人から9人増え、統計のある1980年以降で最多となりました。2010年代の多くは300人台でしたが、2020年に499人となり、その後も500人前後の高い水準が続いています。
前年との差だけで原因や状況の変化を説明することはできません。一方で、高い水準が続き、さらに最多を更新した事実は重く受け止める必要があります。数字を過小評価せず、同時に一つの年の増減だけで単純な物語を作らないことが大切です。
背景を一つに決めつけない
水準が大きく変わった時期は新型コロナウイルス流行期と重なります。休校、行事や部活動の制限、友人と会う機会の減少など、子どもたちの日常は大きく変わりました。学校が「居場所」として持つ役割や、家庭の経済的不安、保護者のストレスなどが影響した可能性はあります。
ただし、自殺は学校、家庭、健康、対人関係、経済状況など複数の要因が重なって生じるもので、統計だけからコロナ禍やSNSを単独の原因と断定することはできません。オンラインのつながりが支えになる子もいれば、負担になる子もいます。本人の置かれた状況を個別に見る必要があります。
報道を受け止めるときに大切なこと
WHOの自殺報道ガイドラインは、センセーショナルな見出し、方法の詳しい説明、自殺を一つの原因で説明することを避け、相談先や回復・支援の情報を示すよう勧めています。報道に接した保護者も、「確認された事実」と「原因についての推測」を分けて受け止めると、必要な対応を考えやすくなります。
学校で大切にしてほしいこと
「居場所」を感じられる仕組み
学校で大切なのは、子どもが「ここにいていい」と感じられる環境づくりです。クラス活動、部活動、委員会活動、行事などを通して誰かと関わり、役割を持てる経験は心の支えになります。
ただ、今の学校が居づらくなっていることもあります。「どこに」とこだわらず、家庭、学校外の活動、相談室など、本人が安心できる「居場所」という機能を意識すると糸口が見えやすいと思います。
小さな変化に気づける体制
遅刻や欠席が増える、元気がない、眠れない、食欲が変わる、保健室利用が増えるといった変化は、自殺だけに特有のサインではありませんが、子どもが苦しんでいる可能性を示します。「消えたい」「死にたい」という言葉があるときは軽く扱わず、落ち着いて直接気持ちを尋ね、学校や医療・相談機関につないでください。
家庭でできる大切な関わり
「正す」より「受け止める」
子どもが不安や悩みを話したとき、「どうしてそんなふうに考えるの?」と正そうとするより、「つらかったね」「話してくれてありがとう」と受け止めることが安心感につながります。解決策を急ぐより、まず理解されることが心の支えになります。
生活リズムを支える
睡眠、食事、日中の活動といった生活の土台を整えることは心身の健康に役立ちます。ただし、生活習慣を整えるだけで自殺を防げると考えたり、本人の努力不足と捉えたりしてはいけません。気になる変化が続くときは、生活の助言だけで済ませず専門家に相談してください。
「成績」より「存在」を認める
成績や結果だけでなく、「頑張っているね」「あなたがいてくれてうれしい」と伝えることは、子どもの自己価値感を支えます。評価ではなく、存在そのものを認める関わりが大切です。
今すぐ安全が心配なとき・相談先
本人が今すぐ自分を傷つける可能性がある、具体的な計画がある、すでに行動に移している場合は、一人にせず、救急車(119)や警察(110)へ連絡してください。
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省):0120-0-78310
- 電話・SNSなどの相談窓口「まもろうよ こころ」(厚生労働省)
- 受診については、当院の家族からの相談、またはお問い合わせをご覧ください。
まとめ
小中高校生の自殺者数が高い水準で続いていることは、社会全体で取り組むべき深刻な問題です。一方で、自殺を一つの原因で説明したり、本人や家庭だけの責任にしたりすることは適切ではありません。小さな変化に気づき、安心して話せる関係と、必要な支援につながる道を日頃から作っておくこと。それが、いま周囲の大人にできる現実的で大切な対応だと思います。