栄養精神医学|人形町駅前こころのクリニック|人形町駅 の精神科・心療内科

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栄養精神医学|人形町駅前こころのクリニック|人形町駅 の精神科・心療内科

こんにちは、ご無沙汰しております。

昨今はDXに関わる対応だったり、産業医の仕事だったり、興味の出てきた分野の勉強だったりしていました。

ブログを書くことを怠けていたことと、グーグルの口コミに薬を出すやつ的なことを書かれてしまったことを反省してちゃんとやろうと思った次第です。

言い訳を許してもらえるなら、受診者に関しては薬が必要な状態の人が多いというのがありますが、確かに短絡的に勧めていた面もあるのでその点反省しきりです。とはいえ、1件目の方に関しては身に覚えがないのですが・・。

服薬なしでの治療という点に関して土台になりそうなのが表題のやつです。

栄養精神医学とは

立ち上げは山口病院の奥平智之先生(https://www.dr-okudaira.com/)です。「食べてうつ抜け」などの書籍などを発行されています。なかなかキャッチ―な感じの論調ですが、生化学・生理学的な研究を基に述べられているもので、分野でいうとBiology という側面が強いです。

従来の精神医学は栄養面についてはあまり言及がないのですが、主要な主張しては、神経機能の基盤となる細胞がちゃんとしてないとうつな治らないよね、細胞や神経伝達物質の材料となるものが不足していたら治らないの当たり前だよね、ということですね。

現代人の栄養不足

幸いなことに今のところ、日本はそこまで飢えることはありません。ただ、これは栄養が十分ということではありません。少なくともカロリーは足りているという状況です。食習慣や飲酒・喫煙、オフィスワークが多くなることによる日照不足、美容志向による日焼け止めの常用(ものによりますが)、ダイエット等実際に栄養素という点でいうとかなり不足しているようです。加えて加齢による吸収力の低下もあるので寿命が延びると必然的に栄養不足の割合は増えてゆきます。

精神医学の栄養面の中核

奥平先生も主張されていますが、基本は鉄、とそれを運ぶタンパク質、ビタミンB群になります。摂っているよ、という人もいるかもしれませんが、ちゃんと吸収できているかも重要で、鉄などは腸に炎症などがあるとすぐに吸収できなくなるようです。この点に関しては採血して測定する以外に客観的に判断する方法がないので、それを見つつ、不足した場合の症状や時に過剰な場合に生じうる症状などを考えていく、というのが治療になります。それを心の健康に関して考えていくのが栄養精神医学ということになります。

薬と食品、栄養素、サプリ

このようにいろいろ興味深い分野ですが、いろいろ勉強して実践しようとすると困った面に遭遇します。それが薬とサプリの境目がよくわからなくなることです。わかりやすいところだとセントジョーンズワートというサプリがありますが、これは内容的にはSSRIという種類の抗うつ薬に類似していて、これは薬では?という気になりますし、漢方薬や生薬になってくると薬膳は薬?のような境目があいまいになります。だったら抗うつ薬でよいのでは、という逆張りも出てきてしまう。

加えて、この点については日本の法律上でも問題になります。メラトニンという睡眠系のホルモンがあります。飲むと眠くなるし、睡眠のリズムを調整する作用があります。欧米ではサプリですが、日本ではメラトベルという小児限定の睡眠薬扱いです。日本だと医薬品となっていた場合、薬扱いになるのでサプリでは売れません。このため日本では成人がメラトニンを使用するには個人輸入をするしか方法がありません。眠気程度しか副作用はなく、良いものなのですが。ついでに言うとこのメラトニンの材料になるのがトリプトファン(アミノ酸←タンパク質)と鉄です。

臨床を行う上で

他にも問題があって、医療を行う上で保険診療は重要です。これを栄養精神医学をやろうとすると、診察・採血は保険診療でできます。栄養素の処方も一部はできます(鉄、亜鉛など)。ただし、保険診療は”病気の治療”を前提に、何に対してどの薬を使うか、ということがある程度決まっているので、ビタミンCなどは適応が難しくなります。そうするとサプリなどでの対応になりますが、これは自由診療になることがあるので、同時にやると混合診療になってそもそも保険診療の診察ができない、など法的な制約があったりします。

この点なんとかできないかなと最近はいろいろ考えています。