こんにちは
ここ最近急性精神病(詳細はあとで)あるいは統合失調症の急激な悪化の方と関係する機会が重なったのでこれを機に一度記載しておこうと思います。
精神病とは
精神科医のいう”精神病”は一般の人のいうそれよりは意味が限定されていることが多いです。一般の方のいう精神病は、いわゆる精神科医のいう”精神障害”のことで精神的不調がかさみ心身がやられてしまう状態、精神科が扱う疾患全体のことを指していることが多いように思います。では精神科での”精神病”とはなにかというと、妄想や幻覚を呈するものを指します。
妄想とは
妄想というのも精神医学用語としては日常で使うものと違い、一般的に間違った、異なるもの、状況を確信しそれが説得によっても訂正不能であるものを指します。「自分が有名人でセレブな生活をしていたら」と思いをはせる(精神科では”空想”と呼び区別します)こと場合、おおくの場合有名人でもセレブでもないので事実と異なります。そしてそれを思っている人は実際はそうじゃないけどそうだったら、と多少の楽しみも込めて空想するわけです。一方、”妄想”となると「自分が有名人でセレブな生活をしていたら」ではなく、「自分は有名人で、セレブな生活をしている」と確信し、周りが否定しても本人は自分以外のすべてが間違っている、とそれに取り合わない状態になってしまいます。
幻覚とは
幻覚についても定義があります。よく実際に動いていないものが動いている画像(サムネイル画像のような)だったり柳の枝が人影にみえたり、天井のしみが人の顔にみえたりすることがあると思います。これらはまとめて”錯覚”といい、現実にある対象を間違って認識してしまった結果起きるものです。空耳とかもこれに入ります。一方、”幻覚”とは対照が現実にないのに認識してしまうことをいいます。ものの影がやおら動き出し人型になって両手を挙げて自分に迫ってくるなど動きを伴うことがあります。統合失調症などでみられる”幻聴”についても、誰もいないはずなのに自分に語り掛けてくる声が聞こえるという対象のないものになります。
統合失調症や急性精神病
このように妄想や幻覚を呈するものを”精神病”と呼びます。その代表が統合失調症で、幻聴と妄想が持続して呈するものをいいます。そのほかにも双極性感情障害、アルコール、薬物の中毒症状、脳炎などでもみられることがあります。
ここからややこしいことになるのですが、臨床をしているとたまに明らかに妄想や幻覚を呈していないがどれも似たような経過をたどるものを経験します。これらはICDやDSM(精神障害の診断基準)では統合失調症の亜型とされていますが、伝統的に非定型精神病と呼んだりしていてそれなりの特徴があります。まとまらない行動で不安や困惑が強く、一見するとせん妄(場合によってはこれも精神病にいれますが、一般的には身体疾患などで体の状況が悪く意識障害のため寝ぼけた状態になることをいいます)のようですが、明らかな原因がないかわからないものをいいます。これらは一時的に症状が続くのですが、ある時からひょこっとよくなって病前の状態と変わらない状態まで回復します。そのため急性一過性精神病性障害とも呼ばれたりします。きちんと対応すればよくなるものなのでできる限り偏見に至らないようにすることが重要になります。
最近ではこの中に抗NMDA受容体脳炎という自己免疫疾患(免疫の異常で自身を標的にしてしまう病気)があるといわれたりしています。もしかしたら統合失調症などと異なり体の病気なのかもしれません。