炎症と過眠|人形町駅前こころのクリニック|人形町駅 の精神科・心療内科

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炎症と過眠|人形町駅前こころのクリニック|人形町駅 の精神科・心療内科

こんにちは

長く診療をしていると、同じ人でもよく睡眠の状態が変わることを経験します。嫌なことがあったり、緊張したり、薬の種類や量を変えているときに眠れなくなるなどは珍しくもないので理解はできます。が、本当に原因らしい原因もなく変わる方もいて、眠すぎて動けないのに我慢する以外に対処がなかったりして四苦八苦しているうちに今度は眠れなくなってしまうなどしています。

過眠については以前から日照時間や気温変化の影響があるなと思っていました。季節性のうつ病などの背景に日照時間が影響しているというものがあるからで、うつ病ではないにせよ、生物として6か月のリズムがありそうだなと思います。

ストレス以外の睡眠変化の原因について、今回は炎症が過眠を引き起こす、というものを紹介しようと思います。

炎症とうつ

さて、睡眠の話に入る前に“うつ”の話です。コロナ禍以降、というかコロナ後遺症(Long COVID)などを知っていくうちに、コロナ感染に限らず、感冒症状の後に倦怠感、意欲低下、不眠(もしくは過眠)を出すパターンをよく見るようになりました。

また、職場でうつっぽくなった人で、いくら聞いてもストレス要因が特にないという初診の方に、それに先行してコロナや風邪にかからなかったか? と聞くとタイミングよくかかっていたりすることを経験すると、全身の炎症やサイトカインの反応によりうつ症状を呈するという脳疲労説は本当なのだなと思ったりします。ちなみにコロナだとわかれば控えめに言って(診断のゴールドスタンダードがないので)コロナ後遺症だろうということですが、コロナでなくても起こっているようです。ヒトヘルペスウイルスも関係するとか。嗅球あたりから反応が始まるようなので、原理的には鼻かぜを起こすウイルスは起こしそうです。もしかしたらうつ病は脳疲労のことを見ていただけなのかもしれません。研究段階でまだ定説がないので確定的なことは言えないのですが。

炎症と睡眠

ともかく“うつ”は炎症と関係しそうです。睡眠はどうでしょうか。どうやらやはり関係があるようです。特に過眠。

炎症によって出てくるサイトカインであるIL-6、TNF-α、とそれによって活性化するNF-κB、プロスタグランジンD₂、炎症に反応して増えるCRPなどが過眠に傾ける性質があるというのが最近言われ始めています。

IL-6は睡眠を誘発し、TNF-αは睡眠圧を増加、プロスタグランジンはマウスで睡眠を促進し、NF-κBは視床下部で覚醒を抑制するように働くようです。加えてCRPは浅い睡眠と関連するという。まるで炎症中は寝ていろ、というような反応ですね。(当たり前かな?)

炎症とは……

風邪などなら寝ていろという体の反応はわかるのですが、これが風邪ではない他の炎症だとどうでしょう。というか炎症とは何でしょうか。

仰々しく書きましたが、とても難しいので詳細は病理学の先生などにお任せして、とりあえず前述のサイトカインとかが出る状況くらいに思っていてください。

「オレンジジュースとはオレンジをジュースにしたものである」という感じでモヤっとするかもしれませんが、結局重要なのがサイトカインの方なのでそれでよいと思います。

サイトカインが出る状況

AIが精神科に関係しそうなやつを、さくっとまとめてくれたので表にして載せます。

状況 炎症との関連 過眠との関係
肥満(内臓脂肪型) TNF-α・IL-6↑ 日中の眠気↑
腸内環境不良 LPS→炎症性サイトカイン 倦怠感・過眠
非定型うつ(Atypical depression) CRP↑ 過眠型が多い
PMS/PMDD IL-6↑ 過眠傾向
高脂肪食+低活動 CRP↑ CLOCK遺伝子低下 概日リズム乱れ

肥満、お腹が弱い、月経前症候群などが、明確なストレス因が起きない状況で過眠をきたしそうです。非定型うつというのは過食、過眠と意欲低下を中心に呈する種類で、季節性のうつに通じる概念で、先ほど日照時間が関係しているという認識なのですが、なんでCRPが上がるんですかね……。

しれっと書いてますが、高脂肪食もダメそうです。特に夕〜夜に食べるとダメだそうです。晩餐は睡眠の敵なんですね。夜は質素にしましょう。脂肪は脂肪でもω3脂肪酸(EPA、DHA)など夕〜夜に取ると逆に睡眠の長さが短くなり、過眠が軽減する可能性があるようです。これについてはまた書こうと思います。

まとめ

うまく体が動かないときこそ、正しい食事をしましょう。

おまけ

炎症による過眠とうつで起きる過眠の比較表

項目 炎症による過眠(まだ仮説) 精神型(抑うつ性)過眠
主体症状 強い倦怠感・眠気
「寝ても疲れが取れない」
心理的動機の低下
「起きる気がしない」
睡眠の質 長く寝ても浅い/中途覚醒あり 比較的保たれることあり
睡眠時間 10〜14時間/日 など長め 8〜12時間程度
起床の困難さ 身体的な重だるさが強い 精神的拒否:「起きたくない」
日中の眠気(EDS) 強い 中等度
体温リズム 概日リズムの振幅低下(推測) 位相遅延型が多い
感染既往 / 炎症性疾患 頻度↑ 関連弱い
腸内環境 / LPS 悪化例が多い 必ずしも伴わない
精神症状 2次的(倦怠感による) 1次的(主訴)
自覚表現 「眠くて動けない」 「無気力で動けない」
起床促進 温熱・軽運動で改善することあり 心理的刺激で改善
抗うつ薬の効果 効果が乏しいことあり 有効なことが多い
ω3脂肪酸効果 抗炎症として期待できる EPA高比率で有効性報告あり
炎症性マーカー CRP・IL-6・TNF-α上昇例 正常範囲が多い
甲状腺・副腎機能 軽度低下の可能性 低下は少ない
よくある併存疾患 肥満・腸炎・PMS/PMDD 不安障害・適応障害
睡眠ポリグラフ所見 深睡眠(N3)低下傾向 正常〜軽度変化
CLOCK遺伝子(推測) PER2振幅低下 / NF-κB上昇 位相遅延(振幅保たれること多い)