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こんにちは。最近、「小中高校生の自殺者数が増加した」というニュースを見ました。同じように目にした方も多いと思います。子どもの命に関わる話題である以上、不安やショックを感じるのは自然な反応です。しかし、強い言葉だけが一人歩きすると、「どうしたらいいのかわからない」という無力感につながってしまうこともあります。まずは落ち着いて、数字の意味と背景を整理することが大切です。
実際の数字はどう動いてきたのか
単年の増減より「ここ数年の水準」を見る
報道では「前年より増えた」という点が強調されがちですが、単年の増減だけでは全体像は見えてきません。過去10年ほどの推移を見ると、小中高校生の自殺者数は2010年代の多くの期間で300人台で推移していました。しかし2020年頃を境に400人台へ増え、その後は500人前後で高い水準が続いています。つまり、問題の本質は「今年急に増えた」ことよりも、「数年前から水準が上がったまま戻っていない」点にあります。
なぜ“増えた年”だけでは判断できないのか
年間の人数は、どうしても多少の上下があります。規模でいうとだいたい20人くらいは統計的なゆらぎの範囲で起こり得るようです。そのため、「前年より何人増えた」という情報だけで状況が急激に悪化したと判断するのは正確とは言えません。大切なのは、長い目で見た流れの中で何が起きているのかを考えることです。
2020年頃に起きた社会の大きな変化
コロナ禍がもたらした環境の変化
自殺者数の水準が変わった時期は、新型コロナウイルスの流行と重なります。休校、行事の中止、部活動の制限、友人との交流機会の減少など、子どもたちの日常は大きく変わりました。学童~思春期は心の発達として集団の中で過ごすことで自身の自立を目指してゆく段階になります。学校は本来、子どもにとって大切な「居場所」です。友人との関係、先生とのつながり、行事での達成感などが、心の支えになっています。その土台が弱まったことは、長期的な影響を残している可能性があります。
家庭環境と生活スタイルの変化
コロナ禍では、家庭にも大きな負担がかかりました。経済的不安、保護者のストレス増加、在宅時間の増加による家族関係の緊張など、家庭の余裕が失われがちでした。さらに、タブレット端末(オンライン授業なので)、スマートフォンやSNSの利用時間が増え、対面での交流が減った生活スタイルがそのまま定着しました。オンライン上のつながりは便利ですが、心の安心感を支える深い関係とは必ずしも一致しません。こうした環境の変化が、子どもたちの孤立感を強めている可能性があります。
学校で大切にしてほしいこと
「居場所」を感じられる仕組み
学校で最も大切なのは、子どもが「ここにいていい」と感じられる環境づくりです。クラス活動、部活動、委員会活動、行事などを通して、誰かと関わり、役割を持てる経験は、心の大きな支えになります。
ただ、今の学校が居づらくなっていることもあると思います。「どこに」とこだわらず、「居場所」という機能面を意識すると糸口が見えやすいと思います。
小さな変化に気づける体制
遅刻が増える、元気がない、保健室利用が増えるなど、小さな変化は重要なサインです。教員が日常の中で声をかけられる体制や、相談しやすい雰囲気を整えることが予防につながります。
家庭でできる大切な関わり
「正す」より「受け止める」
子どもが不安や悩みを話したとき、「どうしてそんなふうに考えるの?」と正そうとするより、「つらかったね」「そう感じることもあるよ」と気持ちを受け止めることが安心感につながります。解決策よりも、まずは理解されることが心の支えになります。
生活リズムを整える
睡眠不足や夜更かしは、気分の落ち込みや不安を強めます。スマートフォンの使い方を見直し、朝起きる時間を整え、日中に体を動かすことは、心の安定に直結する基本的な予防策です。栄養面も重要です。不規則な生活習慣は偏食や欠食が起こりやすく、そしてそれが夜更かしや睡眠不足を助長します。
「成績」より「存在」を認める
成績や結果ではなく、「頑張っているね」「あなたがいてくれて嬉しい」という言葉は、子どもの自己価値感を支えます。評価ではなく存在そのものを認める関わりが大切です。
数字に振り回されず、できることに目を向ける
自殺の問題は簡単に解決できるものではありませんが、「孤立を減らすこと」「安心できる環境を整えること」は確実に予防につながります。ショッキングな報道に心が揺さぶられることはあっても、私たちにできることは身近な場所にあります。子どもの小さな変化に気づき、日常の中でつながりを大切にすること。それが、いま保護者にできる最も現実的で大切な対応なのではないでしょうか。



