こんにちは。
久々の更新ですみません。今日は心理療法、いわゆるカウンセリングについての話題です。
専門家がいう”カウンセリング”
PsyPostという心理論文系のニュースまとめサイトからです。産業医の活動や日々の診療などをしていると「カウンセリングはしたほうがいいでしょうか」とたまに聞かれます。もちろんしないよりしたほうが良いのですが、一応”適応”というのもあります。そもそもカウンセリングというものについての認識がだいたいの方がふわっとしているので答える際には少し具体化して返します。世間でいうカウンセリングというのは「相談者本人の話を聞く」とか「認知行動療法」とか「精神分析療法」とかなんかそんなのという感じになると思うのですが、それだと精神科での診察も話を聞くのでごっちゃになりますので精神・心理領域でカウンセリングというともう少し具体的になります。認知鼓動療法とか特殊なものはとりあえずわきに置いておいて、重要な要素として”構造”があります。特定の”場所”で特定の”時間”、特定の”人”と話す、というものです。わかりやすく言うと、静かで落ち着き安全の図れるオフィスで決まった時間―だいたい30分から1時間、心を許せるカウンセラーと話すことです。非日常の場で自身のことを語りより客観視しやすくする形ですかね。カウンセリングは人の心の傷を扱うので日常の延長で行うと収拾がつかなくなりますしそれは治療と逆行します。療法は日常をよりよく過ごすためのものですから。
カウンセリングは気力を使う
カウンセリングはそんなものなので気力を使います。設定された時間、場所に合わせる必要がありますし金銭的な負担もかかりますし、なにより基本的に自分の嫌なことを話すので疲れます。時には怒りに任せて話すのでしょうが悲しいものは悲しいし消耗します。なので、カウンセリング導入時点ですでに動けないほど疲れ切っていたり、強いパニックや幻覚妄想状態などで収集ついていない状況だったり、心理的な安全が図れていない状況での導入だったりすると悪化しますし続けていられません。そういう意味で”適応”があります。
カウンセリングの効果に重要な要素
さて、今回の話題はそういうカウンセリングの構造の面についての論文です。カウンセリングについての効果をいろいろな論文を集めてメタ解析というやり方で分析したもので、カウンセラーの個人的な技量や相談者の個人的な要素をできるだけ排除する形で論文の中でも結論の信用度が割と高くなるものです。それでも結局個人的な要素が強くて研究難しいよね、というオチになるのですが。
今回分析されたのはうつ病の人を対象としたカウンセリングの回数や総時間、頻度などの効果の違いです。結論としてはカウンセリングの効果は回数や総時間には影響しないとのことでした。むしろ総時間が長くなるほど治療効果が乏しくなるとのこと。論文のなかの総時間の最大が3000時間みたいなので、一回60分、週1回やったとしたら1年ほどかけたカウンセリングですね。たしかにそんなに続けてたら話すこともなくなる気もします。治療効果というよりは治療効率なのかな、と。
次に、カウンセリングの頻度については、頻度が高いほど効果が高いようでした。具体的に言うと週1回よりは週2回のほうが高かったようです。ただ、これは非西洋国であったりうつの症状が強いと効果が変わらなくなったようです。うつの重さについては先に話した通り、うつが強いと話すどころでもないのでかえって悪化するからなのかな。地域に差があったというのはどう解釈すればいいのか思い当たりません。
カウンセリングの研究は難しい
論文では、提言として(比較的)短期の頻度が高いカウンセリングが進められています。が、同時にこれでもかというくらい、研究の限界が言及されていますし、より普遍的な手法(無作為ランダム化)での研究が望まれています。結局わかったようなわからなかったような。これを見てもこの手の研究は難しいですね。そもそもカウンセリングのランダム化などできるのだろうかと思ったりします。
Psychotherapy frequency more crucial than session count, study suggests